中国遼寧省の瀋陽市栄養士協会主催の「中国食育研究健康学会」で「学校給食が教育(食育)に果たす役割」について講演
新年早々の1月11日(土)、鹿児島聾学校の飛松佳子栄養教
諭とともに18:50成田を発って約4時間、瀋陽国際空港に21:30(時差1時間)到着。遼寧省は中国の東北地方に位置しており、気温は-15℃と私の出身地北海道十勝と同じくらいです。鹿児島の飛松栄養教諭には初体験の寒さです。瀋陽市栄養士協会の許さんと、通訳の張磊さんの出迎えで、瀋陽国際ホテルに到着。
1 瀋陽栄養士協会
2014年に中国栄養協会に認可された団体で,公共栄養士や給食業者等、約2,000名の会員が所属し、スタッフとして約30名雇用しています。2019年に設立5周年を迎え、そのイベントとして「中国食育研究健康学会」を開催しました。
協会は調理学校を経営しており、年間1500名を教育するとともに、週末には親子の食育教室も有料で行っており、それが協会の資金源になっています。中国においても「食育」が共通用語になっており、食育で一旗揚げようかと模索している状況が窺えました。
2 中国食育研究健康学会
1月12日(日)、瀋陽国際ホテルにおいて、中国東北地方から集まった参加者約350名で開催。各会員の実践発表、座談会の後、田中の講演(学校給食が教育(食育)に果たす役割)と、飛松栄養教諭の食育の模擬授業(カルシウムの働き)を行いました。講演と模擬授業を夕方にしたのは、参加者を途中で帰さない作戦だそうです。
3 学校及び調理場視察(幼稚園・高校・給食会社)
瀋陽市の学校給食は北京や上海などと同様、市の財政が豊かな地域なので、政府からの補助はなく、全額保護者負担で行われています。
(1)瀋陽誠餐飲有限公司
今回訪問した給食会社は毎日90,000食を調理する調理委託会社です。社長の李さんは食育に関心があり、2年前に東大を訪問し「食育とは何か」を学んだが、今一つ腑に落ちていなかった。しかし、田中の講演を聞いて理解できたと話してくれました。
給食費は次表通りですが、原材料代としてその25~30%が充てられています。日本と比べると物価が安いので、主食、主菜、副菜(牛乳は提供されていない)の、ほぼ豊かな給食が提供されていました。中国には栄養士がいないため、献立は、大学の栄養学部の先生に依頼して作成しています。
給食の安全性に関する保護者の関心が高いため、モニターが設置されており、調理従事者を一括管理できるとともに、保護者を安心させることにも繋がっています。また、使用食材を展示したり、細菌や農薬検査を行ったりして、安全な給食のアピールに努めています。
(2)中高一貫校の学校給食
前の週に生徒が食べたい給食を選択し、当日は顔認証でその給食が提供され、代金も口座から引き落とされるシステムです。また、教員の給食は会社が無償で提供し、教員用の食堂で喫食していますので、給食指導は行われていません。
生徒たちは、大きな食堂で思い思いの給食を食べていますが、指導がされていないため、残菜量が多いのに驚きました。中国は余るほど提供するのが食文化ですので、残すことへの抵抗はないようです。
(3)幼稚園
瀋陽市で最も優れた幼稚園として評価されている「皇姑区実験幼稚園」を訪問しました。入園希望者が多いので、選抜された幼児400名が通園しています。低中高が各4クラスずつ、計12クラスあり、保護者との連携や、成長過程の記録、中庭を中心に四季の移ろいを感じさせる工夫や鳥や動物との触れあいなど配慮されており、素晴らしい幼稚園でした。
4 遼寧省の食事
瀋陽市は中国の東北地方です。小麦粉やじゃが芋、トウモロコシ、こんにゃくを使用した食事が多く、餃子が郷土料理です。
5 おわりに
遼寧省は中国の東北部に位置し、県民性は素朴で控えめです。そんな若い女性スタッフ達と共に時間を過ごす中で、私は日本の栄養教諭達や調理とダブって「可愛い!」と感じていました。最後の夜に彼女達が「今は、冬だから、食べられるものは限られるけど、夏に来てくださったら、あんなものも、こんなものも先生に食べてもらいたいです。私が運転をして先生をご案内します。」と言ってくれました。国籍は違っても人の心は通じるものだとつくづく感じる瞬間です。そして、彼女たちのためにも中国の学校給食と食育の充実・発展を応援して行こうと強く思いました。
帰国後、コロナウイルス騒ぎが勃発!遼寧省は武漢から遠く離れているものの、コロナウイルスに負けず、元気で再会したいと願うばかりです。(田中延子)