タイの首都バンコクにある寺院ワットアルンにて5月23日に開催された食育セミナーにおいて「学校給食を活用した食育」と題して講演を行いました。このセミナーはパシフィックコンサルタンツ株式会社とタイの二大宗派のひとつであるワットアルン寺院との主催で、僧侶、タイ教育省職員、バンコク都の副知事、海外からはインド、マレーシアなどからの参加があり、日本における学校給食の歴史から現在の学校における食育についてお話ししました。特に「学校給食を活用した食育」については、今回同行した学校栄養職員と大学教員(元栄養教諭)に実演してもらい、とても興味を持って聞いていただくことができました。またセミナーでは食育に関する意見交換も行い、僧侶が国民への食育を実施するなど寺院の影響力が大きなタイらしい食育の考え方の一端も知ることができました。
日本における学校給食の歴史については、明治22年(1889)山形県鶴岡町(現鶴岡市)の僧侶たちによって設立された私立小学校で貧困家庭の子供を対象に行われたのが始まりとされていることもあり、参加された高僧も仏教界がイニシアティブを持って進めようと考えていただくきっかけになったと思います。また第二次世界大戦後の何もない状況からの学校給食開始による成果と教育的な効果についても、タイにおける学校給食や食育の充実の可能性を示すことができたのではないかと考えています。
国として学校給食を実施する上で拠り所となる学校給食法の施行、必要な施設・設備、栄養教諭等の配置、人材育成と学校の栄養管理、衛生管理について、また食文化継承などについてもお話しました。
特定非営利活動法人チーム学校給食&食育から派遣された学校栄養職員、大学教員(元栄養教諭)の学校給食を活用した食に関する指導の実演では、三色食品群の説明の後、タイの料理「ガパオライス」と「ヤムウンセン」を取り上げ、それぞれに使われている食材が三色食品群のどれに該当するか参加者に当ててもらいました。これが大好評で、会場から「Red!」、「Yellow!」など大きな声が上がり、とても盛り上がりました。
セミナーの最後には、質疑応答や意見交換が行われました。現在のタイでは托鉢によって食事を摂る僧侶の栄養課題があります。僧侶が深く敬われており、信者である国民は盛んに食べ物を施します。ところが現代の、砂糖、塩、油が多く含まれているものが多く、これが僧侶の健康問題につながってるのです。このことについて、僧侶が国民に食育を行い、その結果として寄進される食材がより健康的なものへと変わり、僧侶の健康にも、国民の健康にも寄与するというお布施文化が根づいたタイにおける独特の食育の考え方にも触れることができました。
高僧の方が「日本の給食の始まりも僧侶の托鉢によって始まり、我が寺院が行っていることと共通している。先ずは、我が寺院が運営する学校から食育を充実させていきたい。今日はそのキックオフの日である」と話して下さいました。タイの方々に日本の給食と食育の重要性が認識され、より良い取組が拡がることを期待します。