最近、子どもたちにさまざまな味覚教育が行われています。そもそも味覚教育とはどのようなものなのでしょうか?フランスの醸造学者、ジャック・ピュイゼ博士が1974年に提唱したことから、味覚教育は始まりました。ジャック・ピュイゼ博士が名誉会長を務める、子どものための味覚教育研究会(IDGE)主催の味覚教育セミナーに参加しました。
セミナーはフランス・ロワール地方の美しい街シノンで5日間に亘り行われました。
味覚教育の提唱者、ジャック・ピュイゼ博士から直接講義を受けることがこのセミナーの大きな目的です。
味覚教育では、子どもたちが五感(視覚、嗅覚、触覚、聴覚、味覚)を使って食べ物を味わう力を育みます。味わうことによって、子どもは自分の身体、感覚と向き合います。感じた味わいは言葉を使って表現することが求められます。ほかの子どもの表現を聞くことによって、自分とは異なる感性をもった存在がいることに気づきます。同じものを食べても、自分と全く同じように他人が感じているわけではないのです。甘味や苦みを感じる力はそれぞれ異なりますし、香りから思い出されるものはそれぞれの体験と深く結びついているものです。こうした体験を重ねていくことで、異なる感性をもつ他人の存在を認め、他人とは異なる感性を持つ自分自身にも自信をもち、主体性をもって生き、人々と共生していくことができる。味覚教育は、よりよく生きる力を身につけることをも目指しているのです。
味覚教育を行う際に注意しなくてはならないことがあります。それは「教えない」こと。正確に言うと、「教えることはできない」のです。感覚を感じられるのは本人のみ。誰もその人の代わりに感じることはできません。人によって感じ方はそれぞれであり、その感覚はどれも正しいものなのです。正解を教えることに慣れてしまった先生方は、最初少し違和感を持たれるかもしれません。
味わうことによって、自分自身を理解し、尊重し、他人を尊重する。表現することで言葉(語彙)が豊かになり、コミュニケーション力も育つ。食べ物と向き合うことで、食べ物の来歴、産地や、風土や生産者、そして栄養についても考える。また、食べることに集中し、ゆっくり食べるようになる。人が食べているのを見て、苦手なものにも挑戦し、克服した事例もあるそうです。食事時間をしっかりとれるようにしてほしい、静かな環境で食べたいという要望が生徒からでたという報告もあるそうです。味覚教育が人々を魅了するのは、五感を使って味わうことがもたらす、二次的な効果の可能性にもあるのかもしれません。
子どものための味覚教育研究会(IDGE)のウェブサイト:http://idge.jp/
シノンはフランス中西部、ロワール地方にある美しい街です。
ワイン造りが盛んです。
食事も味覚教育を学ぶ場です。
熟成の進んだチーズとあまり進んでいないチーズ。
肉にいろいろな飲み物を合わせてみます。
ラディッシュにバターをつけると、味はどう変わるかな?